【サガ エメラルド ビヨンド】しんどいイケメンに釣られたオタクの初見サガエメ綱紀編ピンポイント周回記

怪文書

【サガ エメラルド ビヨンド】しんどいイケメンに釣られたオタクの初見サガエメ綱紀編ピンポイント周回記

ことのはじまり

「サガエメにお前の好きそうな『しんどい目に遭うイケメン主人公』がいる」
 Twitter(現X)のフォロワーから飛び込んで来たのは、そんな一報だった。

 わたしはサガシリーズを多少プレイした経験のあるオタクである。ロマサガ2、サガフロ、ミンサガ、ロマサガRSを経験している(ロマサガ、ロマサガ3、サガフロ2は完走していない)(インサガとサガスカは未プレイでサントラのみ所持)。
 多感な中高生時代にプレイしたPS2版ミンサガは、RPG経験の原風景と言っても差し支えないくらい強烈な体験をさせてくれたものだ。
 加えて、わたしは伊藤賢治さんを「一番好きなゲーム音楽作曲者」と公言してやまない。やっぱり中高生時代に聴いたロマサガの「バトル2」に衝撃を受け、以降自分で趣味として曲を作る上で大いに影響を受けるようになった。
 サガシリーズ最新作にして、イトケンさんの新曲が聴けるゲーム。加えて、そこにはわたしの好きそうな『しんどい目に遭うイケメン主人公』がいるらしい。
 わたしがサガエメに興味を持つのは当然だった。

 しかし、フォロワーから一報が入ったこの時点で、わたしは一度サガエメの体験版(Switch版のアメイヤ編)に触れた上で「今作は買わないことにしよう」という結論を出していた。
 体験版を少し触っただけでも分かるくらい、戦闘は抜きん出て面白い。だが、アメイヤ編の最序盤だけではいまいち物語に魅力を感じなかった……というか「王道魔法少女」という題材を扱っているにしろ、やけに前時代的なシナリオに感じたのである。
 シナリオがわたしの期待を上回ってくるかにはかなり不安がある。しかし、面白い戦闘とイトケンさんの新曲、そしてしんどい目に遭うイケメンがいるのなら、とりあえず手を出しても損はしないのではないか。
 そう考え、わたしは2024年5月11日の早朝に、Switch版サガ エメラルド ビヨンドをポチったのである。

 フォロワーに横流しされたスクショを見る限り、そこには断片的ではあるが確かに「相当しんどそうな展開に巻き込まれるイケメン主人公」こと御堂綱紀の姿が映っていた。
 聞けば、このしんどいスクショはフォロワーが綱紀編2周目のラスボス敗北バッドエンドと、同3周目のラスボス回避エンドで得たものだという。
 なるほど、同一主人公の編を周回することが前提のゲームなのか。これは先が長そうだ。
 そう思いつつ、取り急ぎ各エンドでフォロワーが回収したというしんどいイケメンを得るため、わたしは綱紀編をピンポイント周回する形でサガエメに挑んでいくことに決めた。

 この時、わたしはまだ知らなかったのだ。
 サガ エメラルド ビヨンドというゲームが、しんどいイケメンに釣られて遊ぶには如何に苛烈で底の見えないゲームだったかということを……。

 これは「しんどい目に遭うイケメン主人公」に釣られてサガエメを遊び、綱紀編だけピンポイントで5周したオタクの珍道中を綴る、プレイ記のような怪文書である。
 綱紀編(2周目以降を含む)のネタバレを含むので、未プレイで綱紀編を周回するつもりのある方はご注意頂きたい。
 不満点も含めて相当強火なテンションでサガエメを語っている。目に余る場合もあるかも知れないので、覚悟して読んでほしい。
 また、フォロワーから断片的な情報こそ得ているものの、基本的には攻略情報無し初見プレイのプレイ記となっている。初見ならではの珍道中をお楽しみあれ。
 25000字近くあるので、本当に暇な時に読んで。

1. 綱紀編(1周目)

 そういうわけでサガエメを購入し、綱紀編1周目に挑んだわたしだが、正直なところ1周目の記憶がほとんどない。
 世界観としてサガフロに近いことは分かった。
 デルタベース→ヨミ→グレロンの順で世界を渡ったことは覚えているが、各世界が結局どういう物語だったかをほぼ記憶していない。

 そう、物語に中身がなさすぎるのだ。
 ヨミでドロレスの唐突なデスボに笑うとか、グレロンで「最終皇帝」という単語にびっくりするとか、そういうピンポイントな面白さはあった。しかし、シナリオの大筋があまりに弱くて訴えかけるものがなく、RPGとしてもネタが陳腐で、印象に残らない。
 「サガシリーズ過去作っぽいシナリオテキスト」を意図しているとしても、さすがにあまりにもプレイヤーのモチベの維持というものが成立していない物語である。平成初期くらいのRPGならアリだったかも知れないが、およそ令和の新作RPGで出していいシナリオではない。

 「翠ヴィジョンがメインシナリオ、青ヴィジョンがサブシナリオ、赤ヴィジョンがサブ戦闘」と見るだけで分かるイベントの配置も一本道じみていて、つまらない。自由度が売りのサガシリーズのイベント配置には感じなかった1
 1周目で一番面白かったのは、永遠に失礼剣で連携する主人公のイケメンだったと言っても過言ではない。

 あれ、ひょっとしてこれはイケメンに釣られてクソゲーを掴まされたか。
 そんな感情すら脳裏をよぎった……が、いや、でもフォロワーがしんどいイケメンを吸ったのは2周目以降だという。だとすれば、ひょっとして1周目はチュートリアル扱いとか、そういうことはないだろうか。
 そう考えながら精霊を回収し、ミヤコ市に戻る。ラスボス戦らしいラスボス戦が無いままめでたしめでたしになったことで「あ、これ1周目はチュートリアルだわ」という確信を得る。
 そういう感じで綱紀編1周目は終了した。
 プレイ時間はおよそ6時間。戦闘はめちゃくちゃ面白かったが、シナリオが無味乾燥とした虚無だった。

 なお、イトケンさんの曲は冒頭から非常に良かった。
 初回の戦闘で通常戦闘曲(軽い腕試し)が流れた時点で泣いてしまい、いったんそこでプレイを止めてPCを立ち上げ、3時間くらい耳コピ採譜していた。

2. 綱紀編(2周目)

 さて、チュートリアルっぽいものは終わったわけだが、ここからどう出てくるんだサガエメ。
 そう思いながら綱紀編2周目に突入し、まず冒頭で震え上がる。
 「管理係が綱紀の名前を読める」。
 ごく簡潔だが一瞬で「これは1周目とは異なる物語だ」と直感できる演出を食らう。

 そしてそれに続けて繰り出されるのは、1周目の比でないレベルで「マジ」なシナリオテキストである。
 1周目と同じ状況でそれほど差異のないことを言っている導入なのに、テキストから受け取ることのできる情報の解像度が、1周目とは桁違いに高い。
 早い話が、もうこの時点で1周目とは比べものにならないくらい「シナリオが面白い」のだ。
 殴られるようなとんでもない衝撃を受けた。
 どういうことだ、この「掴みから1周目との落差でひっくり返るシナリオ」は。

 震えながら連接領域で別の世界に渡る。
 予感した通り、そこには1周目では見たこともない光景が広がっていた。

2-1. キャピトルシティ

【世界の顛末】謎の人物から現大統領を防衛することに成功。その後、大精霊と戦闘して取得する。選挙はアレンが勝利。

 サガフロで見たことある感じの世界だな……と思う間もなく、1周目で見覚えのある女性を見つけてさらに震え上がる。
 1周目と同じ人物と話しているはずなのに、会話から得られる情報の解像度が恐ろしく高い。物語の面白さも段違いだ。

 この辺りで察する。サガエメ、断じてクソゲーじゃない。
 1周目がアレである以上絶対に賛否両論ゲーだが、決して最初から最後までクソではない。わたしはイケメンに釣られてクソゲーを掴まされた愚かなオタクではなかったのだ。
 そんな感動を覚えながら最初の戦闘に突入し、大好きなイトケンさんの通常戦闘BGMでまた号泣してしまった。

 綱紀編2周目の面白いところは、シナリオテキストの表現の解像度が高い点だけではない。
 ヴィジョンの配置の仕方が1周目と明らかに異なるのだ。
 1周目は「翠ヴィジョンと青ヴィジョンと赤ヴィジョンが同時に出る」ため翠ヴィジョンが物語のメインの話だと推測しやすく、正直面白くなかった1。しかし、2周目以降は「敢えて翠ヴィジョンは出さずに青ヴィジョンを多数配置し、それらをどのような順番と優先度で取得したかで物語が分岐する」ように思える。翠ヴィジョンはその世界の物語を終えて帰還する時くらいしか出てこない。
 こっちの方が断然面白い。
 初見では簡単に予測できない複雑な分岐を行うことで、過去作と表現方法は異なるが「プレイヤーごとに異なるプレイ体験を与える」というサガシリーズのいつものノリも達成するやり方のように思えた。
 実際、わたしにしんどいイケメンを布教したフォロワーは、わたしが2周目綱紀編で大統領を防衛しているのを見て「何それ俺その展開知らない……」と困惑をあらわにしている。

 この辺りで確信した。
 サガエメ綱紀編、1周目の虚無は意図的にやっている!
 2周目でこのシナリオとこのヴィジョン配置ができるゲームの制作陣であれば「1周目が様々な意味で不出来であることに気づかない」なんてことがあるわけない。わたしはそう直感した。
 でも、仮にそうだとしたら、1周目を意図的な不出来にしたことに何の理由があるのか。
 綱紀編1周目は体験版範囲でもある。意図的に不出来にした物語を体験版として衆目に触れさせたら、体験版で見限って購入しないプレイヤーも多く発生するはずだ。
 実際、わたしは別のフォロワー(イケメンを布教してきたのとは別のサガシリーズ経験者)が、体験版の綱紀編1周目のシナリオの中身の無さに心が折れて、購入をやめる様子を目の当たりにしている。
 シリーズ経験者ですら心が折れかねないチュートリアルを体験版にするのは、明らかに商売として悪手だ。しかもよりによって一番最初にカーソルが合っている主人公が綱紀である。
 サガエメ、これシリーズファン逃がしたりしてないだろうか。大丈夫かこのゲーム。大丈夫かサガシリーズ。でもこれ絶対サガシリーズ以外でやったら暴動が起きる演出だ。サガシリーズであってもデモ行進くらいは起こっていい。
 困惑を覚えつつ、1周目と2周目の落差がすごすぎて脳が焼かれていた。

 ちなみに、キャピトルシティ編では登場しなかったように思うが、リトグラム(パズルのミニゲーム)の挿入の仕方も「明らかにRPGにありがちなギミックとして登場する1周目」と「一見するとパズルで表現しなさそうなものを題材にして登場する2周目以降」で、流れの自然さが段違いである。
 サガエメ綱紀編、絶対に1周目はわざとやっている。わざとじゃなかったら何だと言うんだ。

 2周目のキャピトルシティでは、1周目で見覚えのあるキャラが1周目とは異なる高解像度で多く登場したのも印象的である。
 1周目の段階ではデルタベース黄色族さんがこんなに恐ろしい存在に見えるとは思いもしなかった……。

 そしてこの辺りから、1周目ではまるで見えてこなかった、御堂綱紀という主人公のスタンスや考え方が見えてくる。
 どうも綱紀は「ヴィジョンを介して見えた異世界の人々の困りごとに積極的に手を貸すのが自分の道」だと思っている一方で「異世界の人々の決断を左右することはしたくない」と思っているようである。手を貸すために介入したら、その時点で何らか決断にも関わってしまうのではないか?とちょっと首を傾げた。
 このスタンスについて詳細が判明するのは後の周回の話になる。

 大統領を防衛する時の綱紀と謎の人物のやりとりが「王道ではあるが心地良くかっこいいイケメン主人公と敵役の会話」で「そう!こういうのが欲しかったんだよ、こういうのでいいんだよ!」と膝を叩いてしまった。
 王道主人公が好きな平成のオタクには特効である。
 2周目キャピトルシティ、おそらくサガエメをプレイして一番印象に残っている世界だろう。

 大統領防衛戦辺りで出てくるドローンの挙動を見て、1周目の時にはザックリとしか理解していなかったリザーブ技への理解を深めた。
 また、1周目では手を出していなかった装備品の強化に乗り出し、それが思いのほか楽しいことを知る。
 いやあ、得るものの多い世界だ。楽しい。

2-2. コスモス

【世界の顛末】癌細胞の体外追放に成功。

 キャピトルシティを終えて連接領域で世界を渡ったら、めっちゃサガフロで見たことある感じの世界に辿り着いた。

 キャピトルシティよりは展開に一本道感があるが、それでもシナリオの出来の良さはひしひしと感じる物語である。
 「あ、これ白血病の話をしているのか!」と理解する瞬間が心地良い。
 アブラミぶっ潰してたら突然エンカウントする敵とか、赤ヴィジョンの破壊ボーナス敵「結石」、心臓マッサージのテンションとは思えないテンションで3枚重ねて配置される青ヴィジョンなど、大いに腹筋崩壊させてもらった。満と空の謎解きは何も分からなくて総当たりした。
 前触れなく仲間になる赤血球も、完全にサガフロの「気づいたらなんかPTに入ってるモンスター」の流れで、めちゃくちゃツボってしまった。

2-3. クロウレルム

【世界の顛末】パンドラのタイタニックを撃破し、流砂を止める。

 案山子。
 突然意味不明出力が上がって宇宙猫状態になる。
 いや、よく考えたらサガなんだからこのくらい意味不明でも全然いいのか。とにかく開いた口が塞がらない。
 幽霊子。「うらめし」とかお読みすればいいのか。
 素敵子。「うるわし」とかお読みすれば同上。
 奇妙子。「おかし」とかお読み同上。
 悲哀子。「かなし」同上。

 シナリオの意味不明出力が突然上がってびっくりしたが、一方でこの世界でわたしが感動したのはヴィジョンの配置だ。
 この世界は流れる流砂を渡りつつ、世界各地に配置された青ヴィジョンを回収することで物語が進んでいく。
 そんな中、「これを回収したらこの世界の物語は未決終了になる」と明らかに分かるような流れで現れる翠ヴィジョンがあるのだ。
 出現時に「なんだこの明らかな地雷の翠!?」とゲラゲラ笑ってしまったが……なんとこの翠は地雷選択肢なだけではなく、「流砂ギミックで詰んだ時にこの世界を未決終了にして撤退するための非常口」としても機能しているのである!
 気づいた時にめちゃくちゃ舌を巻いてしまった。
 同時に、こういうイベントの置き方ができる制作陣が1周目の不出来に気づかないはずがないな、というのは再確認した。マジで1周目は何だったんだ。

 クソ堅いはにわ相手にボコボコにされた辺りで「TL前方ガード」「TL後方ガード」の概念に気づく。なるほど。

 結局案山子は最後まで何なのかさっぱり分からなかった。

2-4. サンク

【世界の顛末】森にピンポイントで肩入れした結果、森風が勝利し、水の港が破壊される。雑魚精霊を回収して帰還。

 「紙袋みたいなの」が可愛い。

 この手のやつはピンポイントで1つを強くした方が良いだろう……と思って森にピンポイントで肩入れした結果、無慈悲な話の終わり方になる。
 サガシリーズ、こういう無慈悲な話をする時に、変に長々とエモい吟遊をしたりしないから好きだ。よく研いだ切れ味の良い刃物で一撃で致命傷を食らわせるような、そういう無慈悲さを持っている。
 自分が干渉することで世界が良くない結果になった綱紀も精神ダメージを受けているように見えて、そりゃそうだよなと思った。

 この世界は物語に決着がついた後に出てきた精霊が明らかに雑魚だった。おかげで「これはひょっとして未決終了扱いにしてしまったか」と冷や汗をかく。
 フォロワーが言うには未決終了ってわけでもないようだが、今までの世界が割とグッドエンドっぽい終わり方で大精霊を回収していただけに、サンクの終わり方は不完全燃焼である。
 「ひょっとして、精霊のグレードはその世界の物語の終わり方の善し悪しと関係するのか?」「ワンチャンその世界の物語を終えた時の綱紀の精神状態に依存してないか?」
 そんなことを考えながら雑魚精霊を回収して帰還。

2-5. ミヤコ市

 さて、4つの世界で精霊を回収し、ミヤコ市に戻ってくる。

 結界に異常が起きている。これは1周目にはなかった展開。
 そして1周目ではほぼ詳細の語られなかった綱紀の妹や、ミヤコ市の人々が次々と登場し、その設定や人柄が掘り下げられていく。綱紀を取り巻くキャラ達の情報が増えていくのは心地良い。
 体験版のアメイヤ編を知っていたので、通りすがりの泉ゆめはにニッコリしてしまった。

 児童公園の地蔵のリトグラムを見て、どうもこの世界には「三角形」が多いなと首をかしげる。
 ここまでの話で三角形を想起させる世界と言えばデルタ(Δ)ベースしかない。
 キャピトルシティでも宇宙人という単語が出て黄色族さんと会ったし、ひょっとしてデルタベース民が何か噛んでいるのか。

 そんなことを考えつつ、シンプルで王道ながら熱い展開と共にラスボス戦に突入。
 ラスボスは正直まったく強くない。
 しんどいイケメン情報をくれたフォロワーが「綱紀編2周目で敗北バッドエンドを回収した」と言っていたので、目標を回収すべく期待しながら負けてみたが、ここで驚きの事実が明らかになる。
 なんと、敗北バッドエンドにならないのである!
 しんどいイケメン展開にならないどころか、そもそも敗北すると再挑戦になって物語が続行しない。
 そんな馬鹿な!フォロワーは2周目で回収したんだろ。どこで分岐した!?

 言われてみれば、フォロワーに横流しされたスクショの内容のバッドエンドを出すにしては、弊2周目はいまいちまだキャラの情報が出揃っていないような気がしなくもない。
 ……のだが、まさか敗北するとストーリー自体が進行しないとは思わなくて動揺した。
 当然ながら当該フォロワーもこの現象は予期しておらず、一緒に動揺してしまう。

 シンプルで王道ながら熱い展開のまま、シンプルで王道ながら大団円のハッピーエンドを迎えたが、わたしは釈然としない感情と、サガエメというまったく全容の分からないゲームへの興奮を抱えていた。
 このゲーム、まだまだ何かある。何かあるぞ。わたしやフォロワーの知らない何かが。
 そのままの勢いでタイトルに戻り、そのまま綱紀編3周目に突入した。

3. 綱紀編(3周目)

 導入部分の管理係との会話がもう「以前の周回とは別の話である」ことを隠そうとしていない。
 綱紀も天界に既視感を感じている。
 クグツ経由のメッセージは2周目以前で語りかけてきた父親のものではなく、母親のものである。
 そして天界でワンダリング・モク2体と戦闘。1周目の初戦で1体だけ出てきたアイツである。
 もうこの辺りで読み進めるワクワクが止まらない。

 さらに、わたしが3周目導入の内容でテンション上がっていたら、しんどいイケメンの話を流してきたフォロワーが驚くべき情報をくれた。
 なんと「当該フォロワーのサガエメの2周目」と「弊サガエメの3周目」は導入部分が同じ展開になっているらしい!
 聞けば、フォロワーは全主人公の編をひととおりクリアしてから綱紀編2周目に突入したらしい。
 なるほど、ひょっとして「異なる主人公を含めた通算周回回数」とか「プレイヤーがここまでに持っている情報の量」に応じて、綱紀編2周目突入の時点で導入を含めて話が変わるようになっているのか!
 あまりに面白い現象。そして「同じゲームでもプレイヤーごとに異なるプレイ体験にする」というサガシリーズ的なノリを強く感じる現象だ。
 面白すぎてこの「確実に人を選ぶがめちゃくちゃ面白いゲーム」をもっと遊びたい欲求に火がついた。
 それに、フォロワーの2周目が弊3周目に対応するならば、この周回のラストシーンにはしんどいイケメンを吸えるバッドエンドが待っているはずである!

 実家のような安心感すら感じる連接領域を駆け抜け、新しい世界に飛び込んだ。

3-1. アヴァロン

【世界の顛末】ダイヤ360個でクリア。王には気に入ってもらえたが、グィネヴィアの期待には応えられず、彼女が何を期待していたのかも分からないままだった。

 そんな露骨に過去作を想起させる地名があるか!
 っていうか、グレロンとは別にその地名があるんかーい!

 すごろく風に街を移動してダイヤを集めるゲームを「第1ラウンド:PERFECT」「第2ラウンド:BAD」「最終ラウンド:PERFECT」でクリア。
 気分良く手に入れた古い王冠を見事吟遊詩人に持っていかれたり、海賊シルバーにニヤリとしたり、最凶のモブ二丁拳銃おじさんに笑い転げたりする。

 物語としては「悪い結果ではないが詳しいことは何も分からない」みたいな感じで終了。
 主人公候補のディーヴァちゃんが気になる。
 綱紀はお酒に弱いのか単純にお酒が好きじゃないのか、どっちなんだろう。

3-2. コルディセップ

【世界の顛末】復活した土のヌシ2を倒すも、フルド族以外のコロニーが全滅。

 モフくて可愛いサブキャラを使って展開される話が無慈悲過ぎる。
 あと各種族のビジュアルが強すぎて絵面へのツッコミが追いつかない。
 「これ絶対にもぐら族のコロニーに張り付くのをやめたら妻と息子が死体になるやつじゃん!サガならやる!絶対にやる!!!」と思って張り付き続けた結果、他種族のコロニーが全滅する。
 無慈悲。そしてこの「プレイヤーの選択次第でめちゃくちゃ無慈悲な結末もおいそれと出力される」のが非常にサガの感触。

 土のヌシを復活させるために陰陽のオブジェクトを壊すのが気になる。
 ここまであんまり気にしてこなかったが、今作は五行が属性として存在している。その中で陰と陽を出されると、めちゃくちゃ陰陽五行説を感じる。
 でも、2周目ミヤコ市の宇宙人地蔵の三角形配置は、綱紀の五行の知識では説明できない……みたいな話もあった。わたしたちの世界に存在する五行や綱紀の知っている五行とは似て非なる概念が、サガエメ世界では重要な役割を果たしているのか?
 なんかものすごくデルタベースがきな臭く感じるが……。

 土のヌシの戦闘BGM(おそらく固定ボス戦BGMのひとつ)が今まで聴いたことのない曲だったのも気になる。
 こいつ、けっこう重要なボスなのでは……?五行に土属性も存在するし……。

3-3. ヴェルミーリオ

【世界の顛末】アレサと敵対し、アレサ→フレッドの順で撃破。

 世界観に明らかな「火属性」を感じる。朱鳥の話もどことなく朱雀。
 この世界、五行と深い関係があるのではないか?

 同時にここに来て前に出る露骨な「三角形」の概念が怖い。
 もうどうしようもなくデルタベースがきな臭い。

 込み入った人間関係で「嫌な予感」を蓄積させた後、一気に決壊させて無慈悲な話にするのが相当エグい。
 同時に「まあお前はそうなるだろうね」「まあそこでお前が庇うだろうね!!!!!」という予感というか「お約束」を裏切ってこないのが、王道の好きなオタクとしては非常に心地良い。いやエグいが。
 2周目サンク、3周目コルディセップと並んで無慈悲な顛末になった世界だと思う。
 伏線は明らかに回収しきれていない。朱鳥の件も結局何も明らかになっていない。

 マスターさんが「人間の心の機微はわからないが、人間のことを深く心配しているメカ」で非常に愛おしかった。

3-4. クロウレルム

【世界の顛末】パンドラのバンガードを撃破し、流砂を止める。

 3周目第4世界にして、初めて以前の周回で見たことのある世界に来る。案山子も健在。
 初回に比べてストーリーはかなり端折り気味で、ギミックで詰むようなこともない。
 ボスの居場所とか名前が初回と違うのが気になる。どの構造物がパンドラになるか、パターンがいくつかありそう。
 バンガードと言えばロマサガ3だよね。教授もいたし。

3-5. ミヤコ市

 さて、精霊集めを終えてミヤコ市に戻ってくると、街が明らかに2周目以前とは違う空気に包まれている。
 聞けば、街を守る結界が破られたというではないか。
 「フォロワーの綱紀編2周目は弊サガエメの綱紀編3周目と対応している」という仮説が正しいとすれば、これはしんどいイケメン主人公のバッドエンド回収も期待できるかもしれない。
 胸を高鳴らせながら、結界を修復するため街の東西南北に居座る邪霊を倒すことにした。

 ……のだが、この邪霊とその取り巻き×4が恐ろしく強い。おいそれと即死やマヒを入れられてしまって話にならない。
 高ぶったイケメン欲がすごい勢いで引っ込んでいく。イケメンへの欲求だけで話を進めさせてくれないのが、あまりにもサガとして真っ当で笑ってしまった。
 「即死やばすぎるだろ、これは骨のお守りガン積みか?」と思いながら装備を整える。するとクグツたちに関しては、今までのボスから手に入れたソウルの耐性を駆使すれば、状態異常がほぼ完封できることにやっと気がつく。
 唸ってしまった。ここまでに入手できるソウルの持つ耐性がよく考えられている。

 そういうわけで東西南北の邪霊を撃破する。
 取り巻きが五行属性に対応しているような気がするが、わたしたちの知っている五行においては南が火属性になりそうなところ、火属性っぽい取り巻き(超風を使うやつ)がいるのは西だった。
 やっぱり、わたしたちの知っている五行とはなんかちょっと違う気がする。

 邪霊を撃破後、聖堂に行くと天界の男が天界へ逃げていくので、それを追う。
 するとなんとも意味深な空間に辿り着いた。翠ヴィジョンが数多存在するその空間はプロヴィデンスと呼ぶらしい。
 そこで綱紀の出生について驚くべき秘密が明らかになる。

 明かされた綱紀の出生の秘密は、どちらかというと令和の作品というよりは平成中期くらいの作品を思い起こすような内容である。
 ゲームの主人公が持つには決して突飛な設定ではない。類似する設定の他作品キャラも少なくないだろう。しかし、王道のイケメン主人公に与えるには十分な秘密である。
 サガエメ綱紀編、なんとも心地良く王道を回収してくる物語である(2周目以降は)。

 個人的には、綱紀の秘密と併せて語られる「綱紀がどうしてヴィジョンを介して見える異世界の人々の困りごとに積極的に顔を突っ込んでいくのか」という理由を聞き、シンプルに情緒をやられてしまった。
 ここまでの周回を通して「口調がはんなりしていて年の割に古風だけど、優しくてイケメンで自分の考えをしっかり持っている王道男主人公」としての彼を眺め続けて来たので、その奥底にある非常に人間的な人助けの動機は愛おしい。
 ああ、わたし御堂綱紀のこと推してるんだな。薄々感づいてはいたが、そう自覚した。

 そしてラスボスとの戦闘。
 2周目までのラスボスの曲は明らかに他のボス(最凶ボスや天界の男など)でも使われていたし、「イトケンさんのサガラスボス曲は激しくてカッコ良くてツーバスじゃないとねえ」みたいなことを思っていたので、ここで新曲が出てくるのは想定の範囲内。かっこいい。でも別にツーバスではなかった。
 さて、じゃあフォロワーが回収したというバッドエンドの取得を目指して、試しにわざと負けてみようかな……と思って手を抜くまでもなく、あっという間に(2ターンくらいで)パーティが蹂躙される。
 このラスボス……強い!
 TLが乱されて相手が軽率に連携するのもあり、綱紀とラスボスの会話をスクショに収めるまで耐えるのがやっとのレベルだった3
 これ弊サガエメでは敗北が正史かもしれない。そう思いながら全滅。
 フォロワーからの情報で察していた通り、そのまま(フォロワーが2周目で回収したのと同じ)バッドエンドルートへとなだれ込む。

 そういうわけで、サガエメをプレイする動機のひとつだった「フォロワーが2周目で回収したラスボス敗北バッドエンド」を回収。
 フォロワーから横流しされたスクショを見てなんとなく話の流れは察していたが、ここで実際に目にすることができた。
 わたしなりの言葉でまとめると、綱紀に対しての「死体に鞭打つというレベルではない死体への鞭打ち」みたいな話だった。
 弊2周目で彼が「家族や地元のミヤコ市を深く愛している優しい青年」であることをしっかり描写しておいて、3周目でこの仕打ちである。
 良いしんどいイケメン主人公だった。サガエメ、無慈悲過ぎるだろ。

 なお、この敗北バッドエンドルートにはラスボスとは別に戦闘があるのだが、そこで「ストーリーの関係で綱紀の口調が変わっているにも関わらず、元の口調のボイスが再生されてしまう」のは純粋に演出の不備だと思う。サガエメの明確な不満点のひとつである。
 物語への没入が阻害されてしまったので、非常にもったいない。

 さて、当初の目的のひとつだった「フォロワーが2周目で回収したラスボス敗北バッドエンドの回収」は達成した。残る目標となるのは「フォロワーが3周目で回収したラスボス回避エンドの回収」である。
 フォロワーが3周目で回収したということは、たぶん弊サガエメだと4周目での回収になるのだろう。そう思うとしんどいイケメン主人公を見ることへの期待が湧いてくる。
 加えて、弊3周目のバッドエンドで目にした結末は、御堂綱紀が本来この世界にとってどういう存在だったかを、プレイヤーであるわたしに強く印象づけてくれた。
 綱紀という存在のことについて、もっと深く知りたい。
 そう思いながらタイトルに戻り、そのままの流れで4周目に突入した。

 余談だが、確かこの辺りでサガエメのサントラ(CD版)を購入し、翠の導きの書(公式書籍)を予約注文したと思う。

4. 綱紀編(4周目)

 導入部分の会話は1周目に近い。管理係が綱紀の名前を読めていない。
 だが、クグツ経由でメッセージを送ってくるのは、父親でも母親でもなく叔父である。物語の核心に少しずつ近づいていることを感じる。
 3周目と違って、綱紀は天界に既視感がない。
 天界での最初の戦闘の相手はワンダリング・モク1体。はっきりと1周目の初戦に重ねられている。もっとも、1周目とは違ってもはや「難易度:楽勝」の敵である。
 3周目と違って天界の扉の前に邪霊がいないのが気になった。そういえば、過去の周回で天界の扉の前に邪霊がいたのは3周目だけである。結界と東西南北の邪霊の話といい、もしや3周目は物語的に何らかのレアケースなのだろうか。

 そんなことを考えながら、慣れ親しんだ連接領域を渡る。

4-1. マーレ・ノストラム

【世界の顛末】最強イカダに乗るも最凶ボスで詰む。帆船に乗り換えてバルタサールを撃破。

 「初見なのになんか話の流れ的にネタルートっぽいルートに入ってるな……」と思いながら死ぬ思いでアズーレを倒した後、最凶ボスが出て「えええええええええええ!?」となる。無理無理無理。
 最強イカダから乗り換えれば正規ルート(?)になるようだ。
 アズーレが前座だったのには絶望したが、彼女と戦ったことで「特定属性反応のインタラプトが強い敵のあしらい方」みたいなのを学ぶ。

 またもデルタベース黄色族さんに遭遇。
 加えて、この世界でも三角形に関する話が出てきて不気味だ。
 そしてこの辺りでメニュー画面やロード画面などのUIが「めちゃくちゃ三角形を多用している」ことに気づき、震え上がる。
 もうちょっと後に気づくのだが、連接領域で扉に入る前の演出や、戦闘中に連携範囲奪取した時に飛び散るエフェクトも三角形だ。怖い。
 やっぱりきな臭いぞデルタベース……。

 オウム(フライマンバ)の技名、公式がネタ連携名のネタにする気満々。
 っていうかネタ連携名向けの技を自然に出すためにこのキャラ作ったでしょ。

4-2. プロヴィデンス

【世界の顛末】普通精霊を回収後、残った青ヴィジョンを全て見て監視員と戦闘、撃破。

 3周目で明らかにメインストーリーに噛んでた世界に来てひっくり返る。嫌な予感しかしない。

 この世界は「異世界の人々の困りごとにヴィジョン経由で顔を突っ込む」という綱紀の行動を、分かりやすく可視化する場所だろう。
 そしてプレイヤーが選択肢を間違えれば、干渉先の世界はいともたやすく無慈悲な結末を迎える。
 そういう意味でもここはジェネリックサンク感とかインスタントヴェルミーリオ感を感じる。
 3周目終盤で綱紀が異世界に干渉する理由を描いた上で彼に無慈悲な結末を見せ続けるのは、本当に簡潔かつ端的に無慈悲で頭痛がした。
 めっちゃサガエメの所業。いやわたしが選択肢を間違え続けてるだけなんだけど。

 御堂綱紀、3周目終盤で語られた精神性の持ち主でありながら、サガエメの筆頭主人公として「プレイヤーの選択しだいでいくらでも無慈悲な面を見せる世界」に向き合い続けているのが残酷である。
 世界の無慈悲に無力を覚えた経験を持ちながら、無慈悲な世界に自分から飛び込んでいくようなことをしている。
 この精神性の男がサガの主人公になったのが最大の無慈悲なんじゃないだろうか。

 「これやっぱり綱紀の精神状態と精霊のグレードはシンクロしてないかな……」ヴィジョンを見れば見るほどグレードダウンしていく精霊を見てそう考えながら普通精霊を回収。
 そのまま翠ヴィジョンに入って帰還するのをなんとなく躊躇って、青ヴィジョンを全て回収したところ、監視員ちゃんと戦闘になる。

 いや……綱紀かっこいいな。
 世界の無慈悲さを知っているけれど、それでもそれを変えるべく世界に向き合おうとすることができる、イケメンな王道主人公だ。
 苦しくても歯を食いしばって世界に立ち向かう主人公はかっこいい。やっぱり推せる。

 監視員のヴァーミリオンサンズの追加効果が暗闇で、撃破後のドロップも暗闇耐性が壊滅する「アイマスク」なのが意味深。
 彼女も本当はヴィジョンを見たくないんだろうか。
 あとこの戦闘を見る限り、3周目のラスボスを含めてTLが乱れるのはプロヴィデンスというステージの特性っぽい。

4-3. ブライトホーム

【世界の顛末】青ヴィジョンが出た通りに戦闘をしていく。神殿の強敵(アースドラゴン)にのみ負けたが、なぜか事なきを得たことになった。強敵精霊を撃破&サイモン加入して帰還。

 王様の口から「連接世界」という単語が出てビビる。
 これまでの異世界の住人たちの多くは「異世界があってそこから時々旅人が迷い込むのはなんとなく知っているが、『連接世界』というピンポイントな単語は知らない」くらいの認識の場合が多かった。ピンポイントな単語で語るのは、それこそデルタベース民くらいしか思いつかない。
 ここの王様はやけに連接世界を知っている気がする。導入から思いっきり身構える。

 加えて、この世界にはやけに「見るからにこの世界の地元住民ではない」人々ばかりいる。
 ここまでの周回でどう考えても地元住民じゃない存在がいた世界は、2周目キャピトルシティ(リタとデルタベース黄色族)3周目アヴァロン(ディーヴァと吟遊詩人4)4周目マーレ・ノストラム(デルタベース黄色族)しか思いつかない。
 王様の言動と併せて、何かしら妙な世界に感じる。

 てっきり陣取りゲーム的な話になるのかなと思ったら、一本道気味に青ヴィジョンを回収してめでたしめでたし。あれ?
 一本道気味なヴィジョン配置が非常にサガエメらしくない(綱紀編1周目を除く)のもあって、どうもこれだけで終わる世界のような気がしない。
 世界の真相に迫るのは次周以降に持ち越しってことかな……と思いながら帰還。

 アースドラゴンがめっちゃミンサガで見たことあるドラゴンでニコニコした。
 各周回初戦のワンダリング・モクでも毎回ニコニコしている。

4-4. サンク

【世界の顛末】水にピンポイント肩入れし、火水が勝利した後もピンポイントで肩入れした結果、水以外のテンプルが全て破壊される。水の大精霊を入手するも、水属性精霊は既に入手済み。魂の妖精から金属性の普通精霊をもらって帰還。

 天界の扉が一つしかなかったので「もしやプロヴィデンスみたいにメインシナリオ的な世界を挟むのか?」と覚悟して入ったら、見覚えのあるトラウマ世界に来る。別の意味でひっくり返る。

 前回港を爆破させてしまってちょっと申し訳ない気持ちがあったので、今度は水にピンポイント肩入れすることにした。
 大方の予想通り、やっぱり無慈悲な結末になる。
 これ全勢力に均等に肩入れしたほうがいいやつじゃないか?
 前回の港爆破の裏話みたいなのを水サイドの方から見れたのは面白かった。

 初回と違って無慈悲な結末になって以降も話が続いたので、水へのピンポイント肩入れを続行する。
 結果、無慈悲な結末がおかわりされる。でしょうね。

 水民からの報酬として水の大精霊を入手するも、水属性精霊は既に入手済みで、綱紀が途方に暮れてしまう。
 そこで「紙袋みたいなの」に語りかけられ、金属性の精霊に導かれる……って、紙袋の正体(?)を知るには敢えて入手する精霊の属性を重複させないといけないんかい!
 分岐条件が変態でびっくりしてしまった。サガっぽい。

4-5. ミヤコ市

 ミヤコ市に帰還すると、結界だけじゃなくて聖堂も破壊されている。いきなりアクセル踏みすぎだろう。
 天界の男の意味深な発言を受けて洛学に向かうと、八条の姫さんから「倫子がさらわれた」との情報を得る。
 最愛の家族を救うため戦いに向かう綱紀。しかし、救出した妹からは思いもかけない言葉が飛んできた……。

 ……いや、これ、しんどいイケメン主人公展開にもほどがある!
 わたしはしんどいイケメン主人公が好きなオタクなので五臓六腑に染み渡ってしまったが、3周目までの話を踏まえるとあんまりにもしんどい。毎度のことながら「無慈悲」の3文字が脳裏に浮かぶ。
 そしてここでも変に長々とエモい話をせずに「簡潔かつ端的に致命傷を食らわせてくる」のがめちゃくちゃサガエメだ。
 父親の言動が簡潔過ぎてキツかった。

 フォロワーは3周目でこの話の流れになり、ラスボス回避エンドを取得したらしい。
 「たぶん岩戸を破壊するとラスボス回避エンドなんだろうな」と思いながら、とりあえず一度ラスボスと戦う方向で話を進めてみる。

 天界の男さん、3周目ではミヤコ市を連接世界と同化させる方向で話を進めていたように思うので、4周目だと行動指針が逆になっているように思えて不可解。
 また、天界の男さんの行動指針が3周目と逆になっているので、(3周目を知っているプレイヤーのわたしたちはともかく)彼に敵対する4周目綱紀の視点だと「世界がひとつになるのを止めようとする」というモチベでラスボスには挑まない気がする。
 ラスボス(連戦3戦目)の強さやラスボス前で出る情報の重大さを含めて「世界がバラバラになるのを阻止する」方が真ルートっぽく見えるけど、実際のところどうなんだろうな。

 3周目で「イトケンさんのサガラスボスはこの曲調じゃなくっちゃ」と思った曲を連戦1戦目で使っておいて、連戦3戦目(ラスボス最終形態)で1戦目とは全く異なる「まるで往年のイトケンサガラスボスっぽくない曲」をお出ししてくるのが高度な罠過ぎる。
 ラスボス最終形態の曲、ロマサガRSとかで聴いた曲調だと思った。最近のイトケンさんっぽくて感慨深い。

 ラスボス3連戦、「世界はひとつ阻止ルート」でも「世界バラバラ阻止ルート」でも最終形態に勝てない。
 それどころか連戦2戦目の天界の男で再挑戦しすぎてLPが不安になるレベルである。明らかな実力の不足を感じる。
 「これはラスボス回避ルートを回収して穏便に4周目を終わらせて、次の周回できっちり鍛えてからラスボスに挑んだほうが建設的かも知れない……」と思ったので、ミヤコ市突入のところのセーブデータをロードしてラスボス回避ルートを回収することにした。
 ちなみに、世界バラバラ阻止ルートのほうだとラスボス最終形態の取り巻きが不死なので、おそらくこっちの方が難易度が高い。

 岩戸を破壊してラスボス回避エンドを回収。
 当初の目的(フォロワーから情報を得たしんどいイケメン主人公展開の回収)はこれで完遂したことになる。
 このエンド、しんどいイケメン展開ではあるのだが、描写の余白が多すぎて「結局家族は何を考えて綱紀と一緒にいるのか」が分からない。
 明らかにグッドエンドではないハッピーエンドなので、これはさすがにわざとやってると思う。
 終わり方の瞬発力が高すぎてプレイヤーが置いて行かれる読後感はサガフロのブルー編のラストに近い。
 「本当に家族と和解した」のか「綱紀にとって都合の良い妄想的な何か」なのか、その辺の解釈はプレイヤーに任せられる感じなのだろう。個人的には和解してたところで薄氷のようなハッピーエンドだなと感じるが……。

 ラスボス回避エンドであっても、周回を終えた判定にして次周回に引き継ぎをすることができるようだ。
 3周目の敗北バッドエンドもそうだが「ラスボスに勝てないことで次の周回に入れずにゲーム全体が詰む」という事態が発生しづらくなっているのは偉い。

 なお、今回のミヤコ市のストーリー、めちゃくちゃいいところで誤字と思われる表記があるのがかなり気になった。
 マーレ・ノストラムでも明らかな誤字を見た気がするので、この辺はちょっと残念。
(個人的には綱紀の一人称が「オレ」と「俺」で表記ゆれするのもけっこう気になるのだが、これはわたしが一人称警察なだけかも知れない)

 余談だが、この辺でサガエメのサントラCDをiTunesにインポートし、いつも(Switchのスピーカーで)死ぬほど聴いてる戦闘曲をロスレス+モニターヘッドホンで改めて聴き直したところ、号泣する。いつもBGMで泣いている。
 普段BGMの良いゲームはイヤホンかヘッドホンをつけてプレイするのだが、サガエメはイトケンさんの新曲を至近距離で浴びることに心臓が耐えられず、ここまでずっとスピーカーで遊んでいた。おかげで低音域が聴き取れず、曲の細部を今まで知らなかった。
 毎戦闘これが流れてるの贅沢すぎだろ。

5. 綱紀編(5周目)

 さて、弊綱紀編4周目はラスボス回避エンドという「周回プレイ的には穏便だが、ストーリー的には不完全燃焼」な結末になった。
 しんどいイケメンの供給が大量に得られたので、しんどいイケメンのオタクとしては、ここまででも十二分に満足だ。
 だが、今までサガエメを遊んできたプレイヤーとしての自分が「5周目こそ綱紀たちと一緒に牙を研いでラスボスに一矢報いようぜ」と燃えている。

 ここで他の主人公の編を挟むというのもアリではある。
 しかし、御堂綱紀という主人公の全貌が見えつつある今、ここまで来たらとことん綱紀編を周回したい。
 ここまで一緒に戦ってきた綱紀やクグツちゃんたちと一緒に、彼らの物語に区切りをつけたいのだ。

 綱紀は確かにしんどい目に遭うイケメン主人公だ。各周回で直面する真実が、毎回無慈悲にしんどくて大変良い。
 でも、彼はそれと同じくらい、サガエメという「苛烈で底の知れないゲーム」に一緒に立ち向かい続けた、戦友のようにも感じるのである……。
 そんなことを考えながら「はじめから」を選んだ。
 もう1周一緒に頑張ろうな綱紀。きばっていくで!

 5周目の物語の導入は、4周目とまったく同じだった。
 管理係は綱紀の名前を読み間違える。綱紀は天界に既視感がない。メッセージは叔父。ワンダリング・モクは1体。扉の前に邪霊もいない。
 おそらくは、もうこれ以上「綱紀編を周回することで物語の大筋が変わる」ということはないのだろう。
 それならそれで、戦闘や装備の強化に集中できるというものだ。

 この周回は物語を味わうというよりは、綱紀たちと一緒にラスボスに勝つべく準備を整える周回になる。
 魔石が欲しいし、最凶ボスにも可能な限り挑んでいこう。

5-1. グレートツリー

【世界の顛末】カメ、コウモリ、リス、クマの石化を解除。木の最凶精霊を取得して帰還。

 5周目にして、まだまだ知らない世界にぶつかる。楽しい。

 世界の雰囲気もかわいらしいが、綱紀の言動もかわいらしい。動物にさん付けする20歳の男子大学生。
 綱紀、基本的には「王道イケメン主人公」みたいな振る舞いのキャラだと思うのだが、助けたがりの善人ぶりとどことなく古風な感性、そしてはんなりな口調のおかげで、王道イケメン主人公にしては何とも人当たりが柔らかい。
 ここまで眺めてきたからこそ味わい深い、彼の個性だと思う。

 キーアイテム「カッコウ」を入手したところで「待った!カッコウはアカン!」と思ったが、無事に後の祭りだった。
 こんなにかわいらしい雰囲気の世界でも無慈悲を忘れないの、本当にサガエメらしい。
 そしてどの世界でも、これらの無慈悲をあくまでも「プレイヤーの選択に起因する無慈悲」として演出しているのがミソだ。4周目のプロヴィデンスが非常に分かりやすい。

 比較的穏便に最凶精霊に挑める世界のように見受けられたので、せっかくだから最凶精霊に挑んでみる。
 さすがに数回再挑戦したが、そんなに理不尽さを感じることもなく撃破。最凶精霊の撃破はこれが初めてだ。嬉しい。
 相手に範囲バンプなどのTLを荒らす技がなく、スタンも通るのが幸いだった。4周目で空圧波の範囲バンプを浴びたのがトラウマになっている。

 帰還したら連接領域がめちゃくちゃボタニカルになっててひっくり返った。特に説明は無かった。

5-2. サンク

【世界の顛末】火にピンポイント肩入れし、火水が勝利した後もピンポイントで肩入れした結果、造船所が破壊される。火民からの報酬を拒絶した後、魂の妖精に導かれて火の最凶精霊と戦う。4民全てのテンプルが破壊される。

 ストーリーイベントの背景を見た瞬間「げ!サンク!」と声が出てしまった。
 2周目で割とトラウマになった世界、通算3回目。なんでよりによってここなんだ。

 どういう展開になるか察しはするのだが、一応今度は火にピンポイント肩入れ。
 結果、大方の予想通りに無慈悲なことになる。
 念のため、最初の決着がついた後もピンポイント肩入れを続行。
 予想通りに無慈悲がおかわりされる。でしょうね。
 次にこの世界に当たったら「最初の決着が付くまで火に肩入れし、決着がついたら水に肩入れ」とか、そういう感じにしてみようかな?

 報酬として精霊の力をもらうかどうかの選択肢で、試しにもらわない方を選んでみたら、その後4周目を思わせる展開になった。
 なるほど。報酬を拒絶すると4周目で経験した「精霊の力は貰ったけど属性が被っていて入手できなかった」場合と同じ話になるのか……。
 たぶん属性被りでこの展開になるほうがレアケースなんだろうな。

 4周目に近い展開になったものの、紙袋みたいなのに導かれた後に最凶精霊が出る辺り、4周目とは話が違う。
 せっかくなので火の最凶精霊と戦って撃破。「難易度:最凶」の相手と良い戦いができるようになってきて非常に嬉しい。
 冥槍マリストリクを手に入れて大興奮してしまった。ミンサガの思い出が蘇る。

 で、まさか全テンプル破壊でハッピーエンド(?)っぽい流れになると思わないじゃん。
 喧嘩両成敗なのか、痛み分けなのか。戦争ってものは勝者を作ることがそもそもの間違いなのかも知れない。
 4つのテンプルが破壊された後「全部自分の所為や」っていう言葉が出る綱紀が善人過ぎて心配になる。善人過ぎて自分を追い詰めるタイプの人間の言動である。

5-3. クロウレルム

【世界の顛末】パンドラのヒンデンブルクを撃破し、流砂を止める。

 3周目ぶりに砂の世界に降り立つ。ここに来るのも3回目だ。
 案山子はいつも通り健在。綱紀との会話がツッコミ不在。

 やはり、この世界は周回して訪れる度にボスの名前や外見、パンドラとして扱われる構造物が変わっている。
 以前の周回と異なり、ボスにデバフをかけるギミック(?)の中に壊れているものがあるのも気になった。
 話の大筋は今のところ前回や前々回と大差ないが、この先それが変わる周回も来るのだろうか。

 前周回らへんであんなに取得に苦労した魔石が大盤振る舞いされ始めて笑う。
 たぶんこの先は黒曜石を探してチャンバラすることになるんだろう。

5-4. プールクーラ

【世界の顛末】青に協力できる場合は優先的に青に協力。最後の戦いを除く全ての戦闘に顔を突っ込む。青と白の結晶化を押しのけるが、赤と黄が結晶化してしまう。最凶精霊を回収後、リタに最後の戦いを任せて勝利。

 冒頭から可愛い女の子大盤振る舞い空間で幸せな気持ちになる。綱紀編、わりと女の子に飢えている(PTに女の子がコマチしかいないし)。
 そして2周目ぶりにリタと会って幸せになってしまう。2周目のキャピトルシティで強烈な印象を与えてきたキャラのひとりがリタなので、思い入れが深くとても愛おしい。

 しかし、この辺でうっかりして微妙にネタバレを踏み、プールクーラの無慈悲展開について色々と察してしまう。
 リタがしんどい目に遭うの、ワンチャン綱紀がしんどい目に遭うよりもダメージがでかいので(しんどいイケメンを主食にするオタクの個人的感想)もうリタを守りたくて仕方なくなる。

 とりあえず彼女の所属する勢力を守ればいいのかな……と思いながら青を中心に協力する(青に協力するヴィジョンがない場合のみ、他の色の魔女に協力)。
 魔女たちの価値観を尊重するなら「綱紀は戦闘には首を突っ込まない方が良い」と思うのだが、初回で首を突っ込んでしまったので、中途半端はよくないと思い、その後の雑魚戦は全て顔を突っ込んだ。
 黒の魔女についての伏線など、明らかに回収できていない。

 最後の戦いをリタに任せるか、ここでも首を突っ込むべきか悩むが、ここまで魔女たちの意思に反して顔を突っ込んでしまったのが申し訳なかったので、リタに任せることにした。
 リタが勝利し、彼女と別れて帰還。
 どうもこの話だけで終わる世界な気がしないし、無慈悲な展開があるとしたら通算2回目以降だったのかも……っていう感じはする。

 綱紀やプレイヤーはなんとなく「自分たちが顔を突っ込んで戦闘した方が魔女たちのためになりそう」と考えそうなところ、助けるべき対象の魔女たちが介入を拒むような価値観を持っているのは興味深い。
 プールクーラに限らず、綱紀やわたしたちプレイヤーとは、常識や発想からして全く異なる住民が住む世界も多くありそうだ。
 自分とは全く異なる考え方に直面して苦悩するからこそ、綱紀は魅力的な主人公だし、サガエメは面白いのだろう。
 なんとなくヴェルミーリオ辺りを想起しながら、そんなことを思った。

 最凶ボスとかなり安定して戦えるようになってきたのが分かる。
 青の剣のドロップでまたも大はしゃぎしてしまった。ミンサガの記憶が蘇る。

5-5. ミヤコ市

 そんなこんなで精霊を集め、ミヤコ市に帰還。
 5周目の導入が4周目と一緒だったので予想はしていたが、ミヤコ市における物語も4周目と一緒だ。やはり、これ以上綱紀編を周回することで物語の大筋が変わることはないのだろう(訪ねた世界単位で話が変わることは普通にありそうだが)。

 家族から真実を聞く。岩戸は破壊しない。4周目で倒せなかったラスボスを、今度こそ倒しに行く。
 4周目で「世界をバラバラにするのを阻止するルート」の方が真ルートっぽい話の流れのように感じたので、直感を信じ、そっちのルートでラスボスに挑むことにする。

 連戦1戦目はまるで強くない。苦労せず撃破。
 連戦2戦目の天界の男は5周目でもけっこう強かった。吹雪(全体攻撃)でHPを半分強持って行かれるのが痛い(冷耐性装備とか駆使すればどうにかなりそうではある)。
 若干苦戦しつつ連戦3戦目に突入。これが本当に最後の戦いだ!

 4周目の記憶や何回か再挑戦して得た情報を元に考えると、おそらく5ターン目に固定で飛んでくるエメラルドユニオン(必ず死者が出る威力の全体攻撃)の前に、どれだけラスボス本体を削れるかが勝負だろう。
 4周目よりも手応えがあるので、戦い方の方針が決まれば勝機は十分にある。

 「敵にデバフを入れながら自軍の攻撃力をバフして連携し、オーバードライブによるおかわり狙いで連携率を上げていく」という、3周目くらいから続く弊パーティの基本方針でラスボスを削っていく。
 予想通り5ターン目のエメラルドユニオンでPTが半壊するも、生き残ったメンバーでひたすらTLの前方に出て連携し続ける。
 やがて残ったメンバーもじわじわと削られて倒れ、ついに立っているのは綱紀一人に。
「ここで綱紀が先制してトドメをさせなければ全滅する」そんな局面で見事ラスボスに先制し、アンチマテリアルショットでジャスト気味に敵HPを削りきってフィニッシュ。
 敵配置の関係で独壇場じゃなかったのがちょっと惜しいが、ここに来てあまりにもかっこいい主人公ムーヴだった。
 御堂綱紀、お前こそ弊サガエメ最高の主人公だ!

 ラスボス撃破後のエンディングは、あの死闘の後に続く話としてはあまりにもあっさりしている。
 だが、言葉少なに端的に簡潔に過剰な吟遊をすることなく、綱紀のこれからの姿勢を語るのは、いかにもサガエメらしいな……と、綱紀編を5周越えた今になれば思う。

 生まれた理由からも与えられた使命からも解き放たれた綱紀が、これからどの世界のどこに向かって歩いて行くのかは、プレイヤーの想像の数だけ物語が存在するのだろう。
 そして、どこの世界のどこに向かって歩いて行くにしても……彼はきっとまたいつものように、ヴィジョンの中で見た人々の困りごとに手を貸して歩くに違いない。
 生まれた理由でも与えられた使命でもない、御堂綱紀個人の情熱みたいなものは、いつだってそこに向かっていると思うのだ。
 5周にわたって一緒に旅をしてきて、わたしは御堂綱紀という主人公を、そういうヤツだと理解している。

6. 周回を終えて

 そういうわけで、サガ エメラルド ビヨンドを綱紀編だけピンポイントで5周遊んだわたしが、プレイして得た感想を簡単にまとめると、以下のようになる。

①綱紀編1周目のシナリオやヴィジョン配置は(おそらく意図的にそういう風にしているとは思うのだが)間違いなくこのゲーム最大の問題点もしくは賛否両論点である。
 綱紀編1周目のせいで新規プレイヤーやシリーズファンが離れても、正直致し方ないと思う。何を意図してこのような1周目になったのか気になるところだ。

②綱紀編1周目のシナリオを除いても、演出の不備や誤字など、明確かつ細かい不満点が少なからず目に付く。

③一方で、戦闘を中心にシステム面においては「旧来のサガシリーズの触感を残しつつ、より快適かつ理不尽でない方向に調整されている」ように感じ、非常に好感がある。

④綱紀編しか見ていないものの、シナリオも(2周目以降は)基礎基本に忠実な心地良い王道の物語になっている。
 個人的には大好き。ただし、基本的にテキストが簡潔であまり多くを語らないので、重厚な語り口の物語を求めると拍子抜けするかも知れない。物語の内容も、令和の作品というよりは平成中期~後期くらいの味わいである。

 プレイヤーのわたしに「しんどいイケメン主人公描写の回収を目標にできる」「サガシリーズを少なからず経験している」「サガシリーズの作風に好感を持っている」「イトケンさんの音楽が好き」「基礎基本のしっかりした王道の物語が好き」という条件が揃っていたからこそ、この苛烈なゲームを綱紀編だけ5周するというプレイスタイルに耐えられた感がある。
 物語の掴みが強いわけではなく、戦闘も難しく、ちょっとかじっただけでは全く世界観の全貌も分からないゲームだと思うので、タイパ・コスパ重視の令和のオタクにウケる作品かと言われると、正直全然ウケないと思う。だが、わたしのようなニッチで狭く深い平成のオタクにはクリティカルヒットだった。
 「システムが令和でシナリオが中~後期平成の令和サガフロ」そんな言葉が脳裏に浮かぶ。

 サガエメ、決して他人においそれと勧められるゲームではない。令和に流行るタイプのゲームでもない。商売的に成功してるのか不安も尽きない5
 だが、わたしは久しぶりに熱中してゲームを遊ばせてもらった。いかにもサガシリーズらしい、自分だけの素晴らしいプレイ経験を得ることができた。
 他のプレイヤーの評価がどうであれ、わたしが自分だけの初見プレイの体験を、心から楽しめたことに意味がある。
 御堂綱紀との5周の旅は、そう思わされる充実した時間だった。

 綱紀編を5周遊んだわけだが、まだサガエメというゲームの全貌については3割も理解できていないような体感がある。
 次は別の主人公の編をやってみたいな。女の子がいいな。ディーヴァちゃんはシステム的に面白そうだから後に取っておきたいし、アメイヤとボーニー&フォルミナのどっちにしようかな。
 どうやらわたしは当分サガエメを楽しむことができそうだ。
 本当に、この「確実に人を選ぶがめちゃくちゃ面白いゲーム」と出会うことができて良かったと思う。
 しんどいイケメンをちらつかせて釣ってくれたフォロワーには感謝が尽きない。

 一方で、しんどいイケメン主人公に釣られて綱紀編を遊んだオタクとしては、ひとつ断言できることがある。
 しんどいイケメンに釣られてサガエメ綱紀編を遊ぶのは、タイパとコスパが悪すぎるし、苛烈なゲーム性で精神をやられるから、絶対にやめとけ。

おまけ① ストーリーとは関係ない雑多な感想(システム編)

 上で何度も言っているが、サガエメは戦闘がとにかく面白い。PS2版ミンサガをプレイしていた頃にフル回転していた普段使わない脳細胞(?)が、久しぶりにフル回転して非常に楽しかった。
 シナリオには不満点(賛否両論点?)が少なからず見受けられるが、戦闘はこのゲームの持ち味として思いっきり褒めて良いと思う。「シナリオへの不満や細かい演出の不備でやる気が殺がれても、戦闘が面白くてプレイの推進力になり続ける」という場面が非常に多かった。
 自らTipsを開いたり装備変更を試したりしないタイプの受け身のプレイヤーだと、情報量が多くて噛み砕けなくなりそうではある。サガ新作にそういうプレイヤーが入ってくることも少ない気はするが。

 ミンサガなどの過去作で「技や術をきっちり揃えて行動順調整して…」という前提の上に成り立っていた「連携の接続」という概念を、1周目の初戦から扱えるような戦闘システムにしたのはだいぶ令和的で偉い6。面倒な下準備が削ぎ落とされた印象。
 再挑戦システムや戦闘画面からのロードがあるのも非常に快適である。「初見で戦うボスの初戦は威力偵察と割り切って、ボスの行動の情報を集めながら全滅し、装備を整えて作戦も練って再挑戦」みたいなことがやりやすいのは非常に偉い。全過去作に再挑戦システムを実装してくれていいレベルである(?)
 ロマサガ2やミンサガでさんざん泣かされた死体蹴りやLPブレイクが無いっぽい(1回の戦闘でLPが1より多く減ることが稀な)のも、サガ初心者に優しくて偉い。

 戦闘システムについては「令和サガ」と呼んで差し支えないくらいに「サガ過去作の触感を保ちつつ、理不尽さや訳のわからなさが無くなって快適になっている」印象である。
 「サガシリーズに触れてみたいが、どの作品から触ればいいか分からない」というシリーズ初見のプレイヤーには、サガシリーズ入門として真っ先にサガエメをおすすめしていいだろう(綱紀編1周目からプレイすることはおすすめしないが)。
 システムへの手の入れ方が令和的で偉いので、綱紀編1周目を見ていると本当に「どうして令和のオタクが逃げかねないようなシナリオにしたんだろう」と思わざるを得ない。

おまけ② ストーリーとは関係ない雑多な感想(BGM編)

 通常戦闘曲(軽い腕試し)がいつも通りにロ短調で安心した。
 イトケンサガ通常戦闘曲が毎回ロ短調なのって何か理由は明言されてたっけ?
 普通にイントロのハープがロマサガの通常戦闘曲イントロ冒頭の音型をしている。類似例は最近のイトケンサガ曲だとよく見る。
 曲の構成としてはサガフロの「Battle#1」とロマサガRSの「頂を目指して」を混ぜた感じ。過去作に比べて尺が長い(長い間奏がある)のは戦闘の尺が長いのに合わせたのだろう。
 イントロ終わりのベースがめっちゃロマサガ3で聴いたことあるやつ。

 強敵戦闘曲(本気の戦い)が旧来のサガでいうバトル2の扱いなんだろうな、っていう感じの曲調と使われ方をしている。「バトル2」とか「クジンシーとの戦い」とか「The Soul of Fire」とかと同じ流れ方をする。
 サビに入る時のIII7→VImがわたしの理想のIII7→VIm過ぎてハゲた。これだからイトケンさんの戦闘曲はやめられない。

 固定ボス戦曲A(必ず乗り越える!)はミンサガの「A Piece Of Courage」っぽい。
 なんとなく明るいし、スネアドラムの堅さも似ている。

 固定ボス戦曲B(希望を捨てるな)はミンサガの「Believing My Justice」っぽい。めちゃくちゃ既視感のある音型で駆け上がるストリングスがいる。
 この曲が流れた戦闘は全周回を通して土のヌシ・黄龍・バルサタールのみだったと思う。当初は五行と関係あるボスの曲なのかなと思っていたが、バルサタールは別に関係ない気がするので謎のままである。うーん、ミンサガでいう「邪聖の旋律」みたいな立ち位置の曲だと思ったんだけどなあ……。

脚注
  1. なお、綱紀編を5周終えた後に他の主人公でデルタベースに行ったのだが、どうやら主人公が違うと同じ内容のヴィジョンでも色が異なる場合があるようだ。ゴールド主任が待っているヴィジョンは、綱紀編とボーニー&フォルミナ編では翠、シウグナス編とディーヴァ編では青になるように見受けられる。つまり、翠ヴィジョンでメインストーリーを強調して誘導しているように見える主人公と、そうは見えない主人公があるようだ。なんつーゲームだよ。
  2. 外見はクジラ。綱紀編周回の段階では土のヌシの外見について特に何も思わなかったが、後にボーニー&フォルミナ編でコルディセップに2回目の訪問をした時、見てくれが全く違っててびっくりした。クロウレルムのパンドラみたいにボスの外見と設定が変化するっぽい。
  3. ちなみに、他主人公を含めて通算9周した後に綱紀編3周目のバッドエンドが見たくなり、綱紀編3周目のラスボス前のデータをロードしてラスボスに挑んだところ、当時の装備とステータスでも普通に勝てる相手で笑ってしまった。プレイヤーの習熟の問題だったようだ。
  4. 綱紀編周回後にディーヴァ編を遊んだことで、わたしのこの「ディーヴァと吟遊詩人はアヴァロン地元住民じゃなさそう」という感覚は間違っていたことが判明した。ディーヴァ編冒頭を見る限り、ディーヴァも吟遊詩人もアヴァロンに元からいる存在である。
  5. サガエメ発売後の2024年6月にロマサガ2リメイクが発表されたことから察するに「サガエメで多少商売的にうまくいかなくても、ロマサガ2リメイクとかで十分取り返せる」という判断があったのかもしれない。そうだとすればサガエメが相当攻めた内容であることにも納得がいく。
  6. わたしはインサガとサガスカをサントラしか履修していないので、その辺の作品からこういう仕様の戦闘になってたら申し訳ない。
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